会社設立に必要な印鑑は?代表者印・銀行印・角印の違いと、オンライン申請で変わったポイント

公開日:2026年9月16日

会社設立に必要な印鑑は?代表者印・銀行印・角印の違いと、オンライン申請で変わったポイント

「会社をつくるなら、まずハンコを作らないといけないらしい」

起業の準備を始めると、こんな話を耳にすることがあります。印鑑セットの広告を見ると「実印・銀行印・角印の3本セット」が定番のように並んでいて、全部そろえないといけないのか、どれが本当に必要なのか、迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。

この記事では、会社設立で使う印鑑の種類と役割、2021年の制度改正で変わった点、作るタイミング、そして見落としがちな「印鑑代の経理処理」までを整理します。


結論:最低限必要なのは「代表者印」と「個人の実印」

先に結論をまとめると、会社設立で押さえておきたい印鑑は次のとおりです。

印鑑

設立時の必要度

主な用途

代表者印(会社実印)

◎ ほぼ必須

法務局への印鑑届出、重要な契約書

個人の実印+印鑑証明書

◎ 必須

定款認証、就任承諾書、印鑑届出書

銀行印

○ あると安心

法人口座の開設・取引

角印(社印)

△ 必要に応じて

請求書・見積書・領収書

ゴム印(住所印)

△ 必要に応じて

書類への社名・住所の記入

法律上、会社の設立登記の場面で押印が関わるのは主に「代表者印」と「発起人・役員個人の実印」です。銀行印・角印・ゴム印は、設立後の実務を効率よく回すための道具と考えるとわかりやすいでしょう。


会社で使う印鑑の種類と役割

代表者印(会社実印)

法務局に届け出る、会社にとっての「実印」です。個人でいえば市区町村に登録した実印にあたり、届け出ると法人の印鑑証明書を取得できるようになります。

使う場面は、不動産の売買・賃貸借契約、融資の契約、重要な取引先との契約など、会社として重い意思表示をするときです。

代表者印には大きさのルールがあり、商業登記規則で「辺の長さが1cmを超え、3cm以内の正方形に収まるもの」と定められています。実務では直径18mm前後の丸印で、外枠に社名、内枠に「代表取締役之印」などと彫る二重枠のデザインが一般的です。

銀行印

法人口座の開設や、口座からの出金・振込手続きで使う印鑑です。代表者印を銀行印として兼用することも可能ですが、代表者印を持ち出す機会が増えると紛失や不正使用のリスクも高まります。そのため、別に用意して使い分ける会社が多数派です。

角印(社印)

請求書、見積書、納品書、領収書などに押す四角い印鑑で、個人でいえば「認印」に近い位置づけです。法的な届出は不要で、押さなくても書類の効力に影響はありません。

ただ、取引先によっては角印のある請求書を求められる場合もあります。最近は電子の請求書に角印の画像を配置する運用も広がっているので、紙の書類をどれくらい発行するかに合わせて判断するとよいでしょう。

ゴム印(住所印)

社名・住所・電話番号・代表者名などを組み合わせたスタンプです。役所への届出書や銀行の書類など、社名や住所を何度も手書きする場面で重宝します。必須ではありませんが、設立直後は書類を書く機会が集中するので、あると手間が減ります。


見落としやすい「個人の実印」と印鑑証明書

会社の印鑑に意識が向きがちですが、設立手続きでは発起人や役員の個人の実印と印鑑証明書も必要になります。住民票のある市区町村で印鑑登録をしていない方は、早めに済ませておきましょう。

個人の実印・印鑑証明書を使う主な場面は次のとおりです。

  • 定款認証(株式会社の場合):公証役場での認証時に、発起人の印鑑証明書が求められます。
  • 役員の就任承諾書:機関設計によって、取締役や代表取締役の就任承諾書に個人の実印を押し、印鑑証明書を添付します。
  • 印鑑届出書:会社の代表者印を届け出る際、代表者個人の実印を押し、印鑑証明書(発行から3か月以内)を添付するのが原則です。

どの書類にどなたの印鑑証明書が必要かは、株式会社か合同会社か、取締役会を置くかどうかなどによって変わります。印鑑証明書は有効期限を意識しつつ、必要な通数を事前に確認してから取得すると二度手間を防げます。


2021年の改正で「印鑑届出」は任意に。ただし注意点も

以前は、会社を設立する際に代表者印を法務局へ届け出ることが義務でした。しかし、2021年(令和3年)2月15日の商業登記規則等の改正により、登記をオンラインで申請する場合は、印鑑の提出が任意になりました。

一方で、次の点には注意が必要です。

  • 書面で登記申請する場合は、従来どおり印鑑の届出が必要です。窓口持参や郵送での申請、代理人が書面の委任状を使う場合も同様です。
  • 印鑑の届出だけを単独でオンラインで行うことはできません。オンラインで届け出たい場合は、登記申請と同時に行う必要があります。設立登記の後から届け出る場合は、書面での提出になります。

「任意なら作らなくていい」とは限らない

届出が任意になったとはいえ、設立後に法人の印鑑証明書を求められる場面は少なくありません。代表的なのは、法人口座の開設、オフィスの賃貸借契約、融資の申し込み、許認可の申請などです。

いざ必要になってから印鑑を作り、法務局に届け出て、証明書を取得する……となると、手続きが止まってしまうこともあります。特に事情がなければ、設立のタイミングで代表者印を作り、届け出ておくのが無難です。


印鑑を作るタイミングと選び方

作るタイミングは「商号が決まったら」

代表者印には社名を彫るため、商号(会社名)が確定した時点で注文するのが基本です。書面で登記申請する場合は、申請時に印鑑届出書を一緒に提出するため、それまでに手元に届いている必要があります。

注文から納品までは、既製の書体・素材であれば数日程度が一般的ですが、手彫りや特殊な素材では時間がかかることもあります。登記申請日から逆算して、余裕をもって手配しましょう。

なお、商号を決める際は、同じ住所に同一の商号の会社がないかなど、事前の確認も忘れずに。印鑑を作った後に商号を変更すると、作り直しになってしまいます。

選ぶときのポイント

  • 代表者印と銀行印は見た目で区別できるようにする:同じサイズ・同じデザインだと、押し間違えの原因になります。サイズを変える、銀行印は内枠の文字を「銀行之印」にするなど、ひと目でわかる工夫をしておくと安心です。
  • 素材は使用頻度と予算で選ぶ:柘植(つげ)などの木材は手頃、黒水牛などは中程度、チタンなどの金属は耐久性が高い分価格も上がる傾向があります。
  • ケースや保管方法もセットで考える:印面が欠けると届出のやり直し(改印)が必要になるため、保護ケースに入れて保管しましょう。

設立後の管理ルールも決めておく

代表者印は、押せば会社として正式に意思表示したことになる重要な印鑑です。社長ひとりの会社でも、次のような基本ルールを決めておくと安心です。

  • 代表者印と銀行印は別々の場所に保管する
  • 誰がどんな書類に押印したか、押印の記録を残す
  • 紛失した場合は、速やかに法務局で改印の手続きを行う

メンバーが増えてから慌ててルールをつくるより、設立直後の書類が少ないうちに習慣にしてしまうほうが、ずっと楽です。


まとめ

  • 会社設立で中心になるのは代表者印(会社実印)と、発起人・役員個人の実印+印鑑証明書
  • 銀行印・角印・ゴム印は、設立後の実務に合わせて用意すればOK
  • 2021年2月以降、オンライン申請なら印鑑届出は任意。ただし書面申請では必要で、設立後に法人の印鑑証明書を求められる場面も多い
  • 印鑑は商号が決まったら早めに注文し、代表者印と銀行印は区別できるように

手続きの詳細や最新の取り扱いは、管轄の法務局や司法書士に確認しながら進めてください。


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