起業の資金調達方法にはどんなものがある?「返す・返さない・株を渡す」で整理する7つの選択肢

公開日:2026年9月16日

会社をつくろうと決めたとき、多くの人が最初にぶつかるのが「お金、どうやって用意する?」という問題です。

資金調達の方法は意外とたくさんありますが、ネットで調べると情報がバラバラで、結局どれが自分に合っているのか分かりにくいですよね。

この記事では、起業時に使える資金調達の方法を「返す必要があるか」「株(会社の持ち分)を渡すか」という軸で整理し、それぞれの特徴と注意点をまとめました。

なお、融資や補助金の条件は年度ごとに変わります。申し込む前には必ず公式サイトの最新情報を確認し、必要に応じて税理士や認定支援機関などの専門家に相談してください。

1. まずは全体像:資金調達は大きく3タイプ

起業の資金調達は、ざっくり次の3タイプに分けられます。

タイプ

代表的な方法

返済

経営への影響

自分・身近な人のお金

自己資金、親族・知人からの借入や出資

方法による

小さい(ただし人間関係に注意)

返すお金(デット)

日本政策金融公庫、制度融資、銀行融資

必要

株は渡さない

返さないお金

補助金・助成金、出資(エクイティ)、クラウドファンディング

原則不要

出資の場合は株を渡す

ポイントは、「返さなくていいお金」にもそれぞれ代償があるということです。

補助金は審査が厳しく入金が後払い、出資は株を渡すので経営の自由度や将来の利益の取り分に影響します。どれか1つが正解というより、事業の性質に合わせて組み合わせるのが一般的です。

2. 自分・身近な人のお金

2-1 自己資金

一番シンプルで、すべての起点になるのが自己資金です。

返済も利息も不要で、誰かの意向を気にする必要もありません。また、後述する融資の審査でも自己資金の額は重視されます。

日本政策金融公庫の「2025年度新規開業実態調査」によると、開業時の資金調達額に占める自己資金の割合は平均22.9%、金額にすると平均279万円とされています。「全額を自分で用意する」必要はありませんが、一定の自己資金があると、その後の選択肢が大きく広がります。

注意点

  • 融資の審査では「コツコツ貯めてきたお金かどうか」も見られます。一時的に誰かから借りて通帳の残高を増やす、いわゆる「見せ金」は評価されないどころか、信用を失う原因になります
  • 生活費まで事業に突っ込むと、売上が立つまでの期間に個人の生活が苦しくなります。当面の生活費は別で確保しておきましょう

2-2 親族・知人からの借入や出資

家族や友人から資金を借りたり、出資してもらったりする方法です。金融機関より条件が柔軟なことが多いのがメリットです。

一方で、身近な人だからこそ曖昧にしがちなのが落とし穴です。

注意点

  • 借入の場合は必ず契約書(金銭消費貸借契約書)を作る。 返済期間や金利、返済方法を書面に残し、実際に返済の記録(振込履歴)を残しましょう。契約書や返済実績がないと、税務上「贈与」とみなされ贈与税の対象になる可能性があります
  • 出資の場合は株を渡すことになる。 身近な人でも株主になれば、会社の意思決定に関わる権利を持ちます。将来VCから出資を受けるときに、株主構成が整理されていないと話が進みにくくなることもあります
  • 事業がうまくいかなかった場合の人間関係への影響も、事前に考えておきましょう

3. 返すお金:融資

実績のない創業期に、まとまった資金を用意する方法として最もよく使われるのが融資です。株を渡さずに済むので、経営の自由度を保てます。

3-1 日本政策金融公庫の創業融資

創業融資の定番が、政府が100%出資する日本政策金融公庫(以下、公庫)の融資です。民間の銀行からの借入が難しい創業期の事業者を支える役割を担っています。

代表的な制度が**「新規開業・スタートアップ支援資金」**です。以前は「新規開業資金」という名称で、2025年3月に名称変更とあわせて内容が拡充されました。

主な内容(2026年9月時点で公表されている情報)

  • 対象: 新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方
  • 融資限度額: 7,200万円(うち運転資金4,800万円)
  • 返済期間: 設備資金20年以内、運転資金10年以内(いずれも据置期間5年以内)
  • 自己資金要件: 制度上の要件は撤廃済み(ただし審査では考慮される)

以前の「新創業融資制度」では創業資金総額の10分の1の自己資金が必要でしたが、現在はこの要件がなくなっています。とはいえ、前述の通り審査では自己資金の額や貯め方が判断材料になるため、「自己資金ゼロでも大丈夫」とは考えない方が安全です。

審査で見られやすいポイント

  • 事業計画書(創業計画書)の具体性。 誰に、何を、いくらで売り、毎月いくら入ってきて出ていくのか
  • 資金の使い道と金額の根拠。 設備資金なら見積書、運転資金なら数か月分の支出の内訳
  • 経営者の経験。 その業界での職務経験や、関連するスキルがあるか
  • 個人の信用情報。 クレジットカードや携帯料金の支払い遅延などがないか

実際の融資額は審査で決まり、希望額が満額通るとは限りません。相談は公庫の支店窓口や創業ホットラインで受け付けています。

3-2 制度融資(自治体 × 信用保証協会 × 金融機関)

制度融資は、自治体・信用保証協会・金融機関の3者が連携して行う融資です。

信用保証協会が「保証人」の役割を担うことで、実績のない創業期でも民間金融機関から借りやすくなります。自治体によっては利子や保証料の一部を補助してくれるため、条件次第では公庫より負担が軽くなることもあります。

「〇〇県 創業 制度融資」「〇〇市 創業融資 利子補給」などで検索すると、地域ごとの制度が出てきます。

スタートアップ創出促進保証

経営者の個人保証が不安な方は、**「スタートアップ創出促進保証」**も確認しておきましょう。2023年3月に始まった、創業5年未満の事業者が経営者保証なしで金融機関から融資を受けられる信用保証制度です。

  • 創業関連保証の保証料率に0.2%上乗せすることで、経営者保証を不要にする全国統一の制度
  • 税務申告を1期終えていない場合は、創業資金総額の1/10以上の自己資金が必要
  • 専用の創業計画書の提出が必要
  • 保証承諾後、ガバナンス体制の整備に関するチェック(「経営の透明性」「法人と個人の分離」など)を受ける必要がある

「法人と個人の分離」は、まさに日々の経理で問われる部分です。会社のお金と個人のお金を混ぜずに記帳しておくことが、制度を使い続ける前提になります。

注意点

  • 自治体・金融機関・信用保証協会と関係者が多いため、公庫に比べて融資実行までの期間が長くなりがちです
  • 保証料がかかります(自治体の補助で軽減される場合あり)

3-3 銀行のプロパー融資

信用保証協会の保証をつけず、銀行が自らのリスクで貸すのがプロパー融資です。

ただし、決算書などの実績がない創業直後に受けるのはかなり難しいのが実情です。まずは公庫や制度融資で借りて、きちんと返済実績と決算書を積み上げることで、将来プロパー融資を受けられる土台ができます。

4. 返さないお金①:補助金・助成金

国や自治体から支給される、原則返済不要のお金です。「もらえるならもらいたい」制度ですが、仕組みを理解しておかないと資金繰りで苦労します。

起業時に検討されることが多い制度の例

  • 東京都「創業助成事業」:都内で創業予定の方、または創業5年未満の事業者が対象。賃借料・広告費・人件費など創業初期の経費について、助成対象経費の2/3以内、上限400万円(下限100万円)が助成されます。例年、春・秋の年2回程度募集があり、TOKYO創業ステーションでの事業計画書策定支援の修了など、申請前に満たすべき要件があります
  • 小規模事業者持続化補助金〈創業型〉:国の補助金で、販路開拓などの取り組みを支援します。特定創業支援等事業を受けていることなどが要件になります
  • 各自治体の創業補助金:市区町村単位で独自の制度を用意していることもあります

注意点

  • 原則として後払い(精算払い)。 採択されても、まず自分でお金を払い、あとから報告・検査を経て入金されます。つまり立て替える資金が別途必要です
  • 申請から結果が出るまで時間がかかる。 東京都の創業助成事業では、申請締切から採択結果の公表まで4〜5か月ほどかかります
  • 採択は簡単ではない。 事業計画の具体性や実現可能性が審査され、不採択になることも珍しくありません
  • 対象期間より前に払った経費は対象外になりやすい。 「採択されたら使おう」ではなく、スケジュールを逆算して計画する必要があります
  • 補助金・助成金は法人税の課税対象(益金)です。 「返さなくていいお金=税金もかからないお金」ではない点に注意しましょう
  • 証憑の管理が必須。 実績報告では、見積書・発注書・請求書・領収書・振込記録などをセットで提出するのが一般的です

補助金は「メインの資金源」というより、融資や自己資金で事業を回しつつ、特定の経費を後から補ってもらうものと考えると失敗しにくくなります。

5. 返さないお金②:出資(エクイティ)

株式と引き換えに資金を受け取る方法です。返済義務はありませんが、会社の持ち分を渡すことになります。

5-1 エンジェル投資家

創業初期のスタートアップに、個人のお金で出資する投資家です。元起業家や経営者であることも多く、資金だけでなく経験やネットワークを提供してくれることもあります。

一定の要件を満たすスタートアップへの投資では、投資家側が税制上の優遇を受けられるエンジェル税制という制度もあります。

5-2 ベンチャーキャピタル(VC)

投資ファンドとして、成長性の高いスタートアップに出資する事業者です。数千万〜数億円単位の大きな資金を調達できる可能性があります。

一方で、VCは将来の上場(IPO)やM&Aでのリターンを前提に投資します。「数年で急成長を目指す事業」でなければ、そもそも投資対象になりにくいことは理解しておきましょう。

5-3 J-KISS などの新株予約権型の出資

シード期の出資では、株価(企業価値)の算定を次回の資金調達時まで先送りできる、J-KISSなどの新株予約権を使った手法もよく使われます。株価の交渉にかかる時間やコストを抑えられるのが特徴です。

出資の注意点

  • 一度渡した株は基本的に戻らない。 初期に株を渡しすぎると、経営者の持ち分が小さくなり、その後の調達や意思決定で苦労します
  • 投資契約の内容をよく確認する。 経営への関与の仕方、報告義務、株式の買取条項などが定められていることがあります。弁護士など専門家にレビューしてもらうのがおすすめです
  • スモールビジネスには合わないことが多い。 地域の飲食店や、安定的に黒字を目指す受託事業などは、出資より融資の方が相性が良いケースがほとんどです

6. その他:クラウドファンディング

インターネットを通じて不特定多数の人から資金を集める方法です。主に次の種類があります。

  • 購入型: 支援者に商品やサービスをリターンとして提供する。新商品の開発や店舗オープンなどと相性が良い
  • 寄付型: リターンなしで支援を募る。社会的な活動向け
  • 株式投資型: 非上場企業の株式を、多数の個人投資家に少額ずつ引き受けてもらう

購入型は、資金調達と同時に「本当に欲しい人がいるか」のテストマーケティングやファン作りができるのが大きなメリットです。

注意点

  • プラットフォームの手数料がかかる
  • 目標金額に届かないと資金を受け取れない方式(All or Nothing)もある
  • リターンの原価や発送費を見込んでおかないと、集めたのに赤字になることもある
  • 購入型で集めたお金は「売上」として扱われるのが一般的で、課税対象になります

7. 事業タイプ別:よくある組み合わせ

最後に、事業のタイプごとによくある組み合わせの例をまとめます。あくまで一例なので、自分の事業に置き換えて考えてみてください。

① 一人法人・受託事業・コンサルなど(初期費用が小さい)

自己資金 + 必要に応じて公庫の運転資金

初期投資が小さく、早くから売上が立ちやすい事業は、無理に大きな調達をせず自己資金で始めるケースが多いです。ただ、入金サイト(請求から入金までの期間)が長い取引先がいると手元資金が不足しやすいため、余裕があるうちに公庫で運転資金を借りておく選択肢もあります。

② 飲食店・美容室・小売など(設備投資が必要)

自己資金 + 公庫 または 制度融資 + 補助金・助成金

内装や設備に数百万〜数千万円かかるため、融資が中心になります。補助金は後払いなので、融資と自己資金で一度支払える計画を立てておきましょう。購入型クラウドファンディングで開店前のファンを作るのも一つの手です。

③ ITスタートアップなど(急成長を目指す)

自己資金 + エンジェル投資家(J-KISSなど)→ VC + 公庫の創業融資

プロダクト開発や採用に先行投資が必要な事業は、出資を軸にしつつ、株を渡さずに済む公庫の融資を組み合わせるケースも増えています。出資と融資を組み合わせることで、手元資金を厚くしつつ株の希薄化を抑えられます。

8. どの方法でも「帳簿」が問われる

ここまで色々な資金調達方法を見てきましたが、実はどの方法にも共通していることがあります。

それは、調達したあと・次に調達するときに、会社のお金の状況を数字で説明する必要があるということです。

  • 融資: 追加融資や借り換えの審査では、試算表や決算書の提出を求められます。返済実績と数字の整合性が、次の融資の土台になります
  • 補助金・助成金: 実績報告で、経費の支出を証憑とセットで証明する必要があります
  • 出資: 投資家への定期的な報告や、次の資金調達でのデューデリジェンス(事業・財務の調査)で、帳簿の正確さが問われます
  • スタートアップ創出促進保証: 「法人と個人の分離」などのガバナンスチェックがあります

資金調達というと「どうやってお金を集めるか」に目が行きがちですが、集めたお金を正しく記録しておくことも同じくらい大切です。資金調達を考え始めた段階から、日々の記帳を習慣にしておきましょう。

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※本記事は2026年9月時点で公表されている情報をもとに作成しています。融資・補助金・税制の条件は変更されることがあるため、最新情報は各機関の公式サイトでご確認ください。個別の判断については、税理士・弁護士・認定支援機関などの専門家にご相談ください。

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